バルカー乗船記 その28(2018年7月24日-26日:乗船64日目)フィリピン海いいね!だって時化ないんだもん
7月24日
機関長からすると、船の機器が順調に動き、主機関がプロペラを回し、船が目的地に向かって順調に進んでいる状況を常に維持するのが主業務だ。
逆に言うと、特に大きなトラブルがなければ船を運航するために必要な定期整備を滞りなく実施さえしておけば体力的、気持ち的に余裕が生まれる。ちなみに本船のコンディションは結構良い部類に入る。
船は鳥たちの休息場所?に良くなる。陸岸に近いところを走っていると、陸からの鳥や渡り鳥、海鳥など、色々な鳥たちが船上で休息、あるいは生息することがある。この鳥は小鳥なので恐らく宮古島近辺を航行している時に飛んできたとおもわれる。
こういった小鳥たちは餌を与えても基本、近づいてこない。なので、陸地を目指して飛び立つか、船上で寿命を全うする鳥たちが多い。
鳩が結構飛んできて、船上に居座ることが多々ある。足首には認識番号もしくは伝書を付けており、伝書鳩かと思うことがあるが、一度飛んでくると1ヶ月以上船の上に居座ることがあるので、伝書鳩ではないかもしれない。
バラスト水交換作業は着々と行われている。
デッキ上のサビ打ちは定常的に実施されているが、腐食の進行に整備が追いついていないのが現状だ。
サビ打ち作業時のスコールは天敵だ。せっかくサビ打ちした所が濡れる上に、ペイントを塗ったばかりのところが水に濡れるとペイントが台無しになってしまうからだ。
機関室では先日掃除した廃油タンクからでたスラッジの焼却作業が実施されていた。
もちろん廃油だけでなく、毎日発生する可燃物ゴミはこの焼却炉で焼却処分される。
今日の午後は舵の点検を実施した。ここは船の船尾側にある舵板(舵)のちょうど真上部分に当たる。海面がすぐそこに見える。ここに密航者が忍び込み密航を企てる。
そうだった、今日はみんなでBBQをやる日だった。みんなでお金を出し合い、食材を中国の船食業者から購入した。焼き鳥の串は日頃の皆さんの激務に感謝し、船長、機関長で串を打った。
天気はあまり良くないが、気温は高い。夕日を見ながらのビールは格別だ。
7月25日
今日は朝から雨が降ったり止んだりの天気だった。海は穏やかだ。
デッキ上のサビ打ちしたところに新しいペンキを塗っている。白く見えるのがプライマーといって、サビ打ちでむき出しになった鉄板に塗る錆止め塗料だ。すでにサビが浮いている・・・
今日は船内の電気配線調査を実施した。雨が降ったり、時化たりすると良く漏電警報がなる。今回もその調査だ。
夕方になって雨が上がった。最近ぐずついた天気が続いている。。
そういえば、この間掃除した廃油タンクからでた廃油を焼却中に、その廃油を集めたドラム内をのぞいたところ、不思議な結晶ができていた。
間違いなく体に悪い物質だが、黄金のピラミッドの様である意味美しい。美しいバラは棘を持つ?
7月26日
赤道に近づいているせいか、居住区の外に出ると暑い。本日の天気はまずまずだ。
船首側では甲板部の乗組員が一生懸命サビ打ちをしている。手前と奥に見えるのは錨に繋がっている鎖だ。
無風で、海象条件も良い。だが暑い。
機関室では発電機のシリンダーヘッドと呼ばれる部品を整備中だ。
車のエンジンでも同じ様なものがついているが、車の場合は20万キロ走っても交換することはないと思う。しかし発電機エンジンでは1年に1回は交換整備をしなければならない。1番の理由は、車はガソリンという綺麗な燃料を使っているが、船ではドロドロの低質油を使っているからだ。
ついでにちょっと機関室を見てみよう。これは主機関上段のもう一つ上のフロアになる。ここには本船の心臓部とも言える機関制御室がある。
これらは主機関を構成する部品のスペアで、法律で必要最低限の予備品を本船上に備え付けておかなければならないと定められている。
機関室後部にあるゴミ置場だ。今でこそ家庭ゴミを可燃物、プラスティック、不燃物と仕分ける様に日本もだんだんなってきたが、船では20年前から行われている。
容器はもちろん、地産地消ではないが空きドラム缶を再利用している。
午後から天気が崩れたが雨は降っていない。甲板部も機関部もなんか馬力かけて仕事しているな。そうか!明日は・・・
3日間で進んだ距離:965マイル(1,787キロ)
速力 :13.4ノット(時速24.8キロ)