バルカー乗船記その19(2018年6月25日〜26日:乗船35日目)わーい、ポートヘッドランドに到着だ!
2018年6月25日
昨晩港湾管理事務所から連絡があり、ミッドナイトにパイロットステーション(水先案内人が乗船するポイント)に到着するよう指示があった。
それまで本船は4時間くらいドリフティング(船を動ける状態にして漂流させて時間調整すること)し、パイロットステーションに向かい、そのまま入港した。ダイレクトオンバースというやつだ。
早朝に着岸、それから仮眠をして起床したが外の景色を見ると疲れなどは感じなかった。やはり洋上を航行しているより、着岸している方が気持ちが落ち着く。
ポートヘッドランドの荷役は早い。大型の荷役装置で鉄鉱石を船倉に流し込む。約1.5日で約25万トンの鉄鉱石を積み終える。あのロボットの腕みたいな機械だ。
停泊中は、航海中にできない仕事をすることができる。今回は主機関のクランクケース内点検を実施した。
主機関下段のこのドアの中に、クランク軸と呼ばれる軸が入っており、燃料を爆発させて動くピストンの上下運動を回転運動に変えてプロペラを回転させている。
クランクケース内に異常がないか確認する。各部締め付けボルトやナットの緩みがないか、軸受が損傷していないかなど。何か異常があると底部に脱落していたりする。この鉄の塊が上下に動く。
荷役はもちろん夜通し行われる。停泊中は機器の整備、食料や船用品の積み込み、来客などがあり、忙しい。ご飯もゆっくり食べていられない。
機関部の整備作業もほぼ終わったし、明日は上陸できるかな。
2018年6月26日
今日も朝から快晴、青い空が綺麗だ。荷役も順調に進んでおり、出港は今日の夕方でほぼ決定だ。
てな訳で、出港まで休息を取ることになり、この時間を利用して上陸できる。岸壁に着岸していても岸壁側からは上陸できずサービスボートに海側から乗船し、上陸する。
乗組員で話し合いをし、上陸する人間を決定。全員が上陸できず必要最低限の乗船人数を確保する。自分は運良く上陸できる方に入ることができたが上陸は10時から14時までのたった4時間、されど4時間だ。
上陸用のサービスボートは、乗組員は無料である。一方、サービスボートには一般人も乗船しており、聞いて見ると各船で乗組員を回収すると同時に、一般人からは料金をとってハーバークルーズを実施しているそうだ。確かに大型船のすぐ近くを走るので見応え抜群だ。
ハーバークルーズを堪能した後、ボートは桟橋に着桟し、そこからSeamen's clubへ連れて行かれた。というか、サービスボートの手配はどうもSeamen's clubがやっているようだ。
Seamen's clubとは我々船乗りがよくお世話になる施設で、世界の至る所にある施設だ。キリスト教団体が慈善事業として運営しており、そこには土産が売っていたり、インターネットサービスや電話などはもちろん、バーやレストランなどもあり、ビリヤードやダーツなどをして楽しむ。まさに船乗りの駆け込み寺的存在だ。
Seanmen's clubが手配してくれたバスで近くのショッピングモールに向かった。在船している人から頼まれた物や、船内で消費するお菓子類やビールのおつまみなどを大量に買いこみ、Seamen's clubに戻った。
Seaman's clubでサービスボート出発時間を待つ間、フリーランチのカレーが出てきた。食べ物までフリーなのか?ちなみにクリスマスの時にどこかの港に入港していると、乗組員1人1人にクリスマスプレゼントを持ってきてくれる。
すごすぎるSeamen's club! お礼と言ってはなんだが、ビールを3本とポテトチップスを注文した。またどこかでお世話になります。
最近航空機におけるアルコールに関するトラブルが報道されていたが、厳格なルールが本船上にもある。当直の時間までまだまだ余裕があるし、ルール的にも大丈夫だ。
ポートヘッドランドはオーストラリアの西に位置する工業港でいわゆる僻地だ。西岸の大都市であるパースまで約1600キロメートルもあるらしい。もちろん行かないが。
なので、街も超小ぶりで住んでいる人も鉱山あるいは鉱石積み出し施設で働いている人がほとんどだとのこと。観光客が来るところではなさそうだ。
鉱物だらけからか、飛行機から見た風景もそうだったが、地面が赤い。地面むき出しの場所も多く、まるで火星のようだった。(火星に行ったことはありませんが。)
さあて、サービスボートが来るそうだ。そろそろ本船に帰る時間だ。
帰りは一般のお客さんが乗っていなかった。が、職業柄、他の船は興味があるので、帰りも楽しい。船の型も色々あり居住区が馬鹿でかい船(欧州船か?)、船首の形状が変わっていたり。
本船に無事到着、今夜遅くに出港となるのでそれまで仮眠でもしよう。ポートヘッドランドは初上陸だった。しかし上陸すると気分転換ができる。
明日からまた中国行きの航海が始まる。気合いを入れて頑張ろう。