バルカー乗船記 その23(2018年7月4日:乗船42日目)地球さまに威嚇される
7月3日
船は昨日シブツ海峡を通過し、スールー海の設定された危険海域を抜けた。今日も順調にスールー海を航行中だが、もう安全海域だ。
前航もそうだったが、流木が今回も多い。大きな浮遊物だと避けなければならない。最悪、水面下にあるプロペラや舵が損傷してしまう。
今日はライフボート降り出し用ウインチの点検だ。緊急時、乗組員はライフボートに乗り込み、艇内にある脱出装置を作動させると、重力で海面に落ちる仕掛けだ。海面に落下しても大丈夫な様に設計されているはずだがあまり乗り気しない。
国際法では緊急時にきちんと作動する様に定期的にライフボートを着水させ、作動テストをしなければならないと定められている。
自由落下式のライフボートは毎回落とすわけにはいかないので、代わりにウインチで釣り上げて海面まで下ろす様な仕組みとなっている。そのウインチの点検を実施中だ。
Youtubeに映像があったが、ちょっと怖い・・・
Marinvest vessel M/T Maribel, Free Fall Lifeboat Launching Test
船はどんどん進んでいく。
今日はお好み焼き(関西スタイル)の作り方を教えた。これもメニューの一つとして加えてもらえるだろう。まあまあの味だった。今度はたこ焼き食べたいな。
夕方に強烈なスコールがやってきた。南洋特有とはいえ、バケツをひっくり返したようなスコールはすごい。昔はスコールが来ると清水節約のため、シャンプーを持って外で体を洗っていたと言う。
清水は造水器という機械を使って作られている。この機械(容器)のなかが真空になっており、ここに海水を通してやると沸騰する温度が40℃くらいで沸騰してしまう。なので主機関を冷やした冷却水(温度が90℃くらいある)を通してやると海水は簡単に沸騰するので、蒸発した水を冷やしてやれば清水となる。
本船では1日に20トンくらいの清水を増水しており、1日の消費量が10トンくらいなので、毎日10トンくらい増える計算だ。なので清水はどちらかと言うとあまり傾向にあ理、プーるで毎日清水を使っても問題ない。贅沢な世の中になったものだ。
日本丸では清水節約のため、風呂は海水風呂だった。上がる前におけ1杯の温水で体を流して上がっていた。海水風呂はそれはそれで乙なものだった。
7月4日
今日午前中にスールー海を抜け、南シナ海に入った。今航この辺りはスコールが多い気がする。
スコールの合間を縫って、甲板部が船上構造物のサビ打ちを行なっている。これは甲板が常に海水に晒されているため錆びやすい。
なので、錆びたところのペンキとサビをサビ打ち機で綺麗にし、ペンキを塗り直す作業をほぼ毎日実施している。が、イタチごっこだ。
今日の昼ごはんは、牡蠣の炊き込みご飯と、鳥かつだ。組み合わせは悪いが、炊き込みご飯の味はまずまずだ。
昼からは、船底にあるボイドスペースと呼ばれるカーゴホールドと船体外板の間にあるスペースだ。何かの原因で船体が破損した場合、海水が触接船内に入って来ることを防いだり、逆に貨物スペースが損傷した場合、貨物が直接船外に流出するのを防ぐ役割を持っている。
ボイドスペースは点検以外では乗組員が出入りしないので、酸素濃度が下がっている可能性があるので、事前に通風換気を実施する。その後酸素濃度を測定して安全を確認後、中に入る。点検中も酸素濃度計を常に携帯している。
ボイドスペースは人が十分立って歩けるほどの高さがあるが、中は真っ暗だ。鉄鉱石をつかみ出すグラブがカーゴホールドの底に強く当たると写真の様に凹みができる。
本船のプール、なんと4トンもの清水が入る。なので、昼一からずっと張り続けて夕方に好きな時間に入る。ちなみに温水シャワーも完備だ。
海の色がだいぶん濃くなってきたな。海が変わったせいだろう。
明日、本船は台湾沖に差し掛かる。
あの雲はなんだ?人差し指みたいだな。
本船の進行方向に向かって左側に行けってことか?
本船の進行方向を向かって左側を見ると、子供の形に見えなくもない雲があった。ちょうど小さい子供が座って両手をあげている様な姿だ。
さらに、左手の中指を突き上げて、こちらを威嚇しているのか??
明日は大時化になりそうな予感がした。。
2日間で進んだ距離:623マイル(1153.7キロ)
速力 :12.9ノット(時速23.8キロ)