バルカー乗船記その7(2018年5月乗船9日目)スールー海を抜ける頃に携帯電波をゲット!
昨日午前中にスールー海に入り、穏やかな海面をトコトコと走ってきた。天候は相変わらずすっきりとしない。
海面状態もべた凪とまではいかないが結構穏やかである。
海面の模様はその時の気象海象条件によって色々な色や表情を見せる。その姿を観察するのも楽しい。今日の表情は細かい格子模様と言ったところか。
スールー海縦断で約440マイル(約814km)、12ノットで約36時間で縦断したことになる。ありがたいことに主機関もトラブルなく順調にプロペラを回している。
本船の主機関は2ストローク7シリンダのディーゼルエンジンで高さ約12m、全長約11m、ツインターボで最大出力30,000馬力を発生する。
昼過ぎ、反航船とすれ違う。やはりオーストラリアに鉄鉱石か石炭を摘みに行くのだろう。空船航海なので船が浮き上がり、バルバスバウが海上に出ているのがわかる。
夕方にはフィリピンのネグロス島に接近。これよりスールー海を抜けるまでこの島に剃って航行する。
最近はどの船にも衛星を使ったWi-Fiシステムが搭載されており、基本的にいつでもインターネットを使うことができ、自分が入社した時にはSSBと呼ばれる無線電話が主流で、インマルサット衛星電話が出てき始めただった。
インマルサット衛星電話の通話料は1分数百円で、新婚の頃は月の通話料が10万円位かかっていたような気がする。その時代と比べると基本いつでもどこでも連絡できるので、船上生活の質がかなり向上している。
逆に昔は一度船に乗ると下船するまであまり連絡をしなかったので、ある意味仕事に集中できたが、今はすぐ連絡が取れるため色々な情報が入るが任期満了まで下船できないので、フラストレーションがたまり、精神を病んだりまたは自殺する人間も出てきていると言う。確かに昔よりその手の話は格段に多くなった。
船のインターネットは衛星を使用していることから通信料を抑えるために通信速度を遅くしている。なので、昼休憩や夕方仕事が終わったあとなどはたくさんの乗組員が一斉に携帯電話を持ち出してインターネットを使い出すため、通信速度が劇的に遅くなる。
ラインのメッセージ1つ受診するのに数分、写真などのやり取りは不可能ってな漢字となる。なので、地上波が入ると快適なインターネット通信ができるのでみんな喜ぶ。
自分はGrobal Wi-Fi ルーターを使用し、電波が入るとこならどこでもインターネット通信をエンジョイしている。
一般的に船上生活水準は陸上より数十年遅れていると言われるが、通信環境もまさにそうである。その他たくさんあるが、次の機会に紹介したい。
しかし便利になれると昔に戻れないことがたくさんあるが、インターネットもその一つである。
久々に綺麗な夕日が出たが、眺めて写真を撮っているのは自分と当直航海士くらいで、後の乗組員はインターネットを使って誰かと通信しているのであろう。綺麗な夕日を眺めるくらいの心の余裕は持っておきたいものである。
我々しか眺めることができないんダゾ。