バルカー乗船記その16(2018年6月21日:乗船30日目)赤道通過し南半球へ。船はモルッカ海を抜けバンダ海へ
2018年6月20日
船はオーストラリアに向け、順調に航行中だ。赤道に近付くにつれて天気が良くなっている様な気がする。本日フィリピン海を抜け、モルッカ海に入った。フィリピン東部の海域を太平洋だと思っていたが、この海域をフィリピン海と呼ぶ事を恥ずかしながらこれまで知らなかった。
モルッカ海も聞いたことがなかったし、今回初めて通過する。
バルバスバウも快調に波をかき分けていく。海面に顔を出すとやはり抵抗になっている様に見える。
天気が良いためか、海の色がものすごく綺麗だ。もちろん水深や天候にも影響されるが、海域によって海の色が異っていると思う。
機関室巡検中に、発電機の燃料ライン圧力が若干おかしいのに気が付いた。いつものマークより低い。圧力調整弁の点検をしてみよう。
午後になって海面がだいぶん凪いできた。これこれ、この海の表情が素敵だ。しかしかれこれ数十年前に見たインド洋のべた凪はガラス張りの様で非常に綺麗だったが、いつかどこかでまた見て見たい。いや、すぐ見れるだろう。
色々な雲にも遭遇するが、この雲を眺めるのも面白い。雲の形で天気を予測できるが、私はエンジニアなので業務上必要ない。ただぼんやり眺めているだけだ。
夕方になると虹が出た。ほんのりダブルレインボーになっている。洋上では障害物がないので綺麗に見えるが、カメラで撮るとこれ以上引けないのでしょぼい菅名になっているが。。
2018年6月21日
朝、本船は赤道を超えて南半球へ、モルッカ海からバンダ海に入った。見た感じは何も変わらないが、海水温度が高く、機関室で働くエンジニアへのダメージが大きくなる。
学生時代の遠洋航海実習で赤道を初めて通過した時、学校では赤道には色がついていると教わったが、もちろんのんなことはなく、懐かしい思い出である。
昔から赤道を通過するときには祭りが行われていた。乗組員がネプチューンに扮装して海水をかけたりするのだ。貨物船ではすでに行われていなかったが、客船ではお客さまも巻き込んだ大きな祭りであった。
本船の味噌汁は常に煮詰まっているのでしょっぱく、ワカメがドロドロだ。今度チーフコックに改善してもらおう。本船のチーフコックはフィリピン人なのでしょうがないのだが。ちなみに日本人の厨司長はもういない。部員クラスはもう随分前からコスト削減のために日本人からフィリピン人に取って代わられた。
おっ!島が見える!
しかし携帯電話の電波は入らなかった。残念。。
本日はカーゴタンク内の検査だ。懐中電灯以外の光源がないため、真っ暗だ。しかし最近のLEDフラッシュライトは安くて明るい。
カーゴタンクへ行くのにもちろんエレベータなどない。甲板上から十数メートルもある階段を使ってタンク底部まで降りる。揚げ荷役ではグラブと呼ばれる大きな爪の付いたバケツやブルトーザなどを使うため、荒い使い方でタンク内を損傷させてしまうことがある。また、水分が底に溜まるのでそれを抜くためのスペースが鉄鉱石で埋もれてないかなどの確認をする。
ちなみに乗船時には必ずLEDフラッシュライト、BAHCO(バーコ)のアジャスタブルレンチ、細いマイナスドライバー、さしがねを持って乗船している。若い時から使っているいわば愛用品だ。
さあて、昼ごはんだ、おっ!牛丼買っ!む、、あ、甘い。。
午後からはポートヘッドランド入港前のカーゴライトの点検を実施した。甲板上にあるライトに海水や雨が入り、漏電してしまうことがざらにある。また、タマ切れ箇所は事前に交換しておく。
おっとっと、タイミングの悪いことにスコールがやってきた。とりあえず避難だ。
スコールといえば、レインボー。今日は昨日よりダブルレインボーがはっきり見えた。
デッキライトの点検も無事終わり、今日の作業は終了だ。
晩ごはんは鶏団子スープの作り方をチーフコックに教えて作ってもらった。味はまあまあだが、少し硬い。。スープも濃い。。次回に向け要改善だ。
さあて、明日はこの東航路の最大の難所、アロール海峡だ。これを抜けるとインド洋に入り、オーストラリアまで目と鼻の先だ。